【2025年最新レビュー】テレヘルスで薬剤師の業務が変わる:世界の動向と導入のヒント

柔軟な働き方とキャリア形成
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 2025年最新レビュー論文をもとに、薬局でのテレヘルス活用がもたらす変化とその有効性を解説。服薬アドヒアランスの改善や患者満足度の向上など、非対面支援の可能性と、薬剤師が果たすべき新たな役割について詳しく紹介します。

はじめに:テレヘルスの波は、薬局にも確実に広がっている

近年、医療分野において「テレヘルス」の活用が急速に進んでいます。これは、単なるオンライン診療にとどまらず、薬局を含む多職種の医療提供者が、非対面でも患者支援を行う手段として大きな注目を集めています。特に、COVID-19以降は遠隔フォローの必要性が再認識され、薬剤師の業務領域も大きく変わりつつあります。

2025年1月に発表された論文
「Telehealth Interventions in Pharmacy Practice: Systematic Review of Reviews and Recommendations」(J Med Internet Res)は、世界各地のレビュー研究を統合し、薬局実務におけるテレヘルスの有効性を検証した、非常に重要な報告です。本記事ではその内容をわかりやすく紹介しつつ、日本の薬局実務への応用可能性についても考察します。


論文の概要:薬局でのテレヘルス導入効果を世界規模で分析

この研究は、過去10年ほどの間に行われた**薬局領域のテレヘルス介入に関するレビュー論文を統合した「レビュー・オブ・レビュー」**です。対象となった文献には、電話、ビデオ通話、テキストメッセージ、アプリ通知など、多様な手法を用いた介入が含まれていました。

そして、その結果として示されたのは、次のような明確な傾向です:

  • 服薬アドヒアランス(遵守率)の改善
  • 患者満足度の向上
  • 再入院率の減少

特に注目すべきは、「コミュニティ薬局における非対面介入が、対面介入と同等あるいはそれ以上の効果を示した」という点です。つまり、薬局という最前線においても、リモート支援が対面支援に劣らない成果を出していることが示唆されました。

薬局実務における遠隔医療に関する18件のレビューにおける遠隔医療介入の割合。この円グラフは、2012年8月から2024年12月までに公表された18件のレビューで使用された様々な種類の遠隔医療の分布を示しています。電話によるケアは最も一般的な介入であり、主に遠隔診療と遠隔モニタリングで使用されていました。遠隔サポートサービスでは、モバイル、ウェブ、およびコンピューターアプリケーションが最も普及していました。電話、ファックス、電子メッセージ、電子医療記録の共有、ビデオ会議を組み合わせた遠隔コラボレーションは、医療従事者間のコミュニケーションを強化するために、いくつかの研究で使用されました。これらの介入は、地域薬局や遠隔薬局サービスなど、さまざまな薬局実務現場で適用されました。


シンガポールの先行事例:薬剤師による遠隔介入の成功例

論文内では、いくつかの国での導入事例も紹介されていますが、特に注目されたのがシンガポールです。同国では、政府主導のもと、薬局薬剤師が電話やアプリを通じて、処方後のフォローアップや服薬状況の確認を行う体制を構築しています。

その結果、患者の服薬継続率が向上しただけでなく、医療機関との連携もスムーズになったと報告されています。シンガポールの例は、テクノロジーと薬剤師の専門性を融合させることで、持続可能な医療支援体制が構築可能であることを示しています。


日本の薬局にとっての意味:何が変わるのか?

日本においても、2022年の診療報酬改定以降、「服薬フォローアップ加算」や「情報通信機器を用いた服薬指導」が制度上可能となり、テレヘルスの基盤は整いつつあります。

しかし、制度としては整っていても、実際の薬局業務ではまだ十分に活用されていないのが現状です。その理由としては:

  • ITインフラやツールへの不慣れ
  • 人手不足や時間的制約
  • プライバシーへの懸念
  • 患者側のデジタルリテラシー不足

といった現場ならではの課題が挙げられます。

一方で、テレヘルスは「時間と場所を選ばない柔軟な支援」を可能にする強力なツールでもあります。たとえば、再来が困難な高齢者や、仕事で薬局に通いにくい若年層への対応にも活かせます。


テレヘルスで広がる薬剤師の業務領域

この論文の意義は、テレヘルスが単なる代替手段ではなく、薬剤師の新たな活躍の場を示唆している点にあります。

たとえば:

  • 服薬指導後の定期的フォロー(例:2週間後の副作用確認)
  • 薬歴ベースのリスクスクリーニングと、リモートでの再確認
  • 生活指導やセルフメディケーションのサポート
  • 地域医療・在宅ケアとの連携強化

このように、「薬を渡す」から「行動を支援する」役割へと変化するチャンスを、テレヘルスは提供しているのです。


薬局がテレヘルスを導入するための第一歩とは?

テレヘルス導入にあたり、薬局が意識すべきポイントを以下に整理します。

  1. 明確な目的設定
     誰に対して、どのタイミングで、どんな支援を行うのかを決めること。
  2. シンプルなツール選定
     電話、LINE、SMSなど、使い慣れたツールから始めることが肝心です。
  3. 記録と共有の仕組みづくり
     リモートで得た情報を記録し、チーム内で共有する体制を整えることが重要です。
  4. 患者への周知と同意
     プライバシーに配慮し、テレヘルス支援の内容を丁寧に説明することで、信頼を得られます。

まとめ:テレヘルスは“薬剤師の価値”を再定義する

2025年のレビューが示すように、テレヘルスはもはや一時的なトレンドではなく、薬局薬剤師の業務変革を支える柱の一つになりつつあります。

非対面でも患者に寄り添い、薬の適正使用を支援し続ける。その姿こそ、これからの薬剤師に求められる姿です。

テレヘルスを通じて、「場所」に縛られない薬剤師の専門性を発揮し、持続可能な地域医療の担い手として、新たな一歩を踏み出してみませんか?


参考文献:

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