OTC類似薬77成分、自己負担増へ?|2027年実施を目指す制度改正の全体像市販類似薬(OTC類似薬)77成分で患者自己負担増へ|厚労省が検討する医療保険制度見直しの現状OTC類似薬77成分、自己負担増へ?|2027年実施を目指す制度改正の全体像

厚生労働省の社会保障審議会において、
市販類似薬(いわゆるOTC類似薬)を対象とした医療保険制度の見直しが議論されている。

本制度改正案では、
市販薬と成分・効能が類似する医療用医薬品77成分(約1100品目)を対象に、
従来の自己負担割合(原則3割)に加え、追加的な患者自己負担(特別負担)を求める仕組みが検討されている。

これは、

  • OTC医薬品の活用促進
  • 医療保険財政の適正化
  • 軽度医療の外来受診抑制

といった政策目的のもとで議論されているものであり、
現時点(2025年12月)では制度確定ではなく「検討段階」である点に注意が必要である。

一方で、本改正が実施された場合、
処方現場・服薬指導・患者説明・医療機関経営に与える影響は小さくないと考えられる。

本記事では、医療従事者向けに

  • 市販類似薬(OTC類似薬)の定義
  • 患者負担が「増える」とは具体的に何を指すのか
  • 対象成分・実施時期の考え方
  • 現場で想定される影響と留意点

について、現時点で公表されている審議内容・報道情報に基づき整理する。

1.市販類似薬(OTC類似薬)とは何か

市販類似薬(OTC類似薬)とは、一般用医薬品(OTC)として市販されている成分・効能と類似する医療用医薬品を指す、政策上の便宜的な呼称である。
法令上の正式名称ではなく、厚生労働省の審議会資料等で用いられている用語である点に留意が必要である。

これらはあくまで医療用医薬品であり、処方箋に基づき保険診療で使用されてきた薬剤である。一方で、同一または類似成分がOTC医薬品として薬局・ドラッグストアで購入可能であることから、「なぜ保険給付の対象となっているのか」という点が制度上の論点となってきた。

背景には、

  • セルフメディケーションの推進
  • 軽症疾患での外来受診・処方の適正化
  • 医療保険財政の持続性確保

といった政策目的がある。

2025年12月現在、OTC類似薬として検討対象に含まれていると報道・審議資料で言及されている例

抗アレルギー薬・エピナスチン塩酸塩(アレジオン錠)、ベポタスチンベシル酸塩(タリオン錠)、ロラタジン(クラリチン錠)、フェキソフェナジン塩酸塩・塩酸プソイドエフェドリン(ディレグラ配合錠)、制酸・緩下剤の酸化マグネシウム(マグミット錠)、緩下剤・ピコスルファートナトリウム水和物(ラキソベロン錠)、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)・フェルビナク(セルタッチパツプ)、ステロイド・ヒドロコルチゾン酪酸エステル(ロコイド軟膏)、ペタメタゾン吉草酸エステル(リンデロン-V軟膏)、軟膏基剤・白色ワセリンなど。

2.なぜ「77成分」が対象とされているのか

今回議論されている対象は、77成分(剤形・規格違いを含め約1100品目)とされている。
ここで重要なのは、「品目」ではなく成分単位
で整理されている点である。

選定の基本的な考え方として示されているのは、

  • OTC医薬品として既に流通している成分
  • 主に軽症・急性症状に用いられる領域
  • 医師の専門的判断が必須とされないケースが多いと考えられている薬剤

といった条件である。

一方で、

  • 慢性疾患治療薬
  • 長期継続処方が前提となる薬剤
  • 代替手段が乏しい薬剤

については、原則として対象外とする方向性が示されている。

3.特別負担の仕組みと通常3割負担との違い

今回の制度見直しで最も誤解されやすい点は、「保険適用除外」ではないという点である。
検討されているのは、医療保険給付を維持したまま、患者自己負担を追加的に求める仕組み(特別負担)である。

現行制度では、

  • 被保険者:原則3割負担
  • 高齢者等:1~2割負担

となっている。

検討案では、これに加えて、

  • 対象となる市販類似薬について
  • 薬剤費の一定割合(例:4分の1相当)を特別負担として上乗せ

する仕組みが想定されている。
結果として、3割負担の患者では実質的な自己負担率が上昇する構造となる。

なお、

  • 高額療養費制度との関係
  • 公費負担医療への影響
  • 子どもや低所得者への配慮措置

については、制度設計が未確定であり、今後の審議事項とされている。

4.現場への影響(薬剤師・医師・医療事務)

薬剤師への影響

服薬指導時に、

  • なぜ自己負担が高くなるのか
  • OTC医薬品との違いは何か
  • OTCに切り替えた方がよいのか

といった説明を求められる場面が増える可能性が高い。
制度理解が不十分なままでは、患者との信頼関係に影響するおそれがある。

医師への影響

処方時に、

  • 患者負担増を踏まえた薬剤選択
  • OTC利用を含めた治療選択肢の説明

が求められる可能性がある。一方で、医学的妥当性より経済性が強調されすぎないよう注意が必要である。

医療事務・受付への影響

会計時に「なぜ高いのか」という問い合わせが増えることが想定される。
制度説明用の資料整備や、職種間での情報共有が不可欠となる。

5.まとめ:現時点で医療従事者が押さえるべきこと

  • 市販類似薬の患者負担見直しは検討段階であり、確定事項ではない
  • 対象は77成分とされているが、最終的な範囲は未確定
  • 保険適用除外ではなく、特別負担を上乗せする制度案である
  • 実施された場合、現場での説明責任は確実に増加する

今後も審議会動向を注視し、患者説明に耐えうる正確な制度理解を職種横断で共有していくことが重要である。

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